フリーライターの森岡葉のブログです。 大好きな音楽のこと、日々の出会い、楽しかったこと、美味しかったもののことなどを書いていきたいと思います。



   
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jasminium

Author:jasminium
1956年生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。1975年~76年北京語言学院・北京大学歴史系に留学。音楽ジャーナリスト。2009年第53回ブゾーニ国際ピアノコンクールにプレス審査員として招かれたほか、ハエン国際ピアノコンクール、シドニー国際ピアノコンクール、中国国際ピアノコンクールなどにジャーナリストとして招かれている。著書:『望郷のマズルカ~激動の中国現代史を生きたピアニスト フー・ツォン』(ショパン)、『知っているようで知らないエレクトーンおもしろ雑学事典』(共著)(ヤマハミュージックメディア)、訳書:『ピアニストが語る! 現代の世界的ピアニストたちとの対話』(焦元溥著 アルファベータブックス)、『音符ではなく、音楽を! 現代の世界的ピアニストたちとの対話 第2巻』(焦元溥著 アルファベータブックス)

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フー・ツォン コンサート

   
 昨日は、京都でフー・ツォンのコンサートが開催されました。

 フー・ツォンの父フー・レイは、ロマン・ロランの作品を中国に紹介したフランス文学者で翻訳家。その縁で、京都のロマン・ロラン研究所の創立60周年記念のコンサートが開催されたのです。

 ―魯迅の『阿Q正伝』をヨーロッパに初めて紹介したロマン・ロラン、そしてロランの『ジャン・クリストフ』全訳を日中戦争下の中国青年に紹介したフー・レイ。そのご令息であり、偉大な世界的ピアニストとして知られるフー・ツォン氏。激動と苦難に満ちた長い歴史を経て、この世界を結ぶ精神の輪が、いま完成されようとしています。(ロマン・ロラン研究所理事長・西成勝好氏の挨拶文「三つの文明(Chine:Japon:Europe)の出会い」より)―

 ハイドン没後200年を記念したこの日の曲目について、私はこのような文章をプログラムに書かせていただきました。




 1955年、第5回ショパン国際ピアノコンクールでアジア人として初めて第3位を獲得。同時にマズルカ賞を受賞した中国出身のピアニスト、フー・ツォン。このとき第2位になったウラディミール・アシュケナージは、コンクールを振り返って、「決して忘れることができないのは、永遠に私のそばを離れないだろうと思えるほどのマズルカを弾いた中国人ピアニスト、フー・ツォンです」と語っている。
 文豪へルマン・ヘッセに「それはひとつの奇跡」と絶賛されたフー・ツォンのショパンの演奏は、世界中で高い評価を受け、彼を「ショパン弾き」と見る向きもあるが、モーツァルト、ベートーヴェン、スカルラッティ、シューベルト、ドビュッシーなどの名演の録音も数多く残している。その彼が70歳を過ぎて、大きな情熱を持って取り組み始めたのがハイドン。
 「ハイドンは凄い作曲家だ。老年になっても、いたずらっ子のように明るく無邪気な童心を持ち続け、知性とユーモアにあふれた音楽を書いている。機知に富んだ和声の響き、緩徐楽章の美しさは、聴く人の心をとらえて離さない」と語るフー・ツォン。
 ハンガリー系の大貴族エステルハージ家に楽長として仕え、「交響曲の父」と呼ばれたハイドンだが、鍵盤楽器のための作品は、純粋に彼の心の中を映し出す鏡のように生涯にわたって書かれた。当時の鍵盤楽器は、チェンバロ、あるいは今日のピアノの原型となるフォルテ・ピアノ。ピアノ・ソナタが全部で何曲あるかについては諸説あって不明だが、ウィーン原典版では62曲を数える。初期の愛らしい佳品から後期のグランド・ソナタまで、さまざまな感情を音楽に託し、古典の枠組みの中で自由に飛翔させている。
 その尽きない魅力に惹かれ、近年のリサイタルのプログラムには必ずハイドンの作品を入れているフー・ツォンが、ハイドン没後200年の記念イヤーに用意したオール・ハイドン・プログラムは、ピアノ・ソナタHob.???:46、Hob.???:32、Hob.???:49、Hob.???:33、そして『アンダンテと変奏曲』Hob.???:6、最後にピアノ・ソナタHob.???:50。
 技術的にはそれほど難しくはないが、その豊かな音楽の輝きを真に表現するのはきわめて難しいハイドンの作品。「ハイドンを弾くには、楽曲に対する深い理解に加えて、無限の想像力が必要」と語るフー・ツォン。円熟した技巧で珠玉のプログラムをどのように聴かせてくれるのか、楽しみだ。とくに、ピアノの音楽史上最も美しい作品のひとつに数えられる『アンダンテと変奏曲』、深い精神性を湛えた後期の2つのソナタHob.???:49、Hob.???:50は、歴史に残る名演になるに違いない。




 フー・ツォンの抒情豊かで生き生きとしたハイドンの世界を堪能しました。演奏後のトーク「父フー・レイとロマン・ロラン」も感動的で、素晴らしいコンサートになりました。

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 終演後は、フー・ツォンを囲んでピアニストの神谷郁代先生、フー・レイがフー・ツォンに書き送った書簡集『傅雷家書』の日本語版『君よ弦外の音を聴け』の訳者榎本泰子さん、ロマン・ロラン研究所の方々と歓談しました(フー・ツォン、神谷郁代さんと)。 

 今日は、京都で少し遊んできたいと思いましたが、あれこれ仕事が気になって、フー・ツォンをホテルで見送ってから午前中に帰って来ました。今回の京都は、フー・ツォンのすばらしい演奏が聴けただけで満足です。ブログやホームページを通じて親しくなったフー・ツォンのファンの広島の転妻よしこさん、アリアCD店主の松本大輔さんにもお目にかかれて嬉しかったです。週末は姪の結婚式で高松に行きます。なんだか忙しい

 広島の転妻よしこさんがブログで、フー・ツォンのコンサートについて素敵な感想を書いてくださっています。是非ご覧になってください。
http://blog.goo.ne.jp/rc1981rc/e/711cfa65c54e1b86ccd1439bd0286c06
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初めまして
フー・ツゥオンは祖国を追われポーランドに亡命したんですよね。
それなのに彼が名声を得てくると中国は、我が国が誇る偉大な芸術家などと持ち上げています。
ま、それはいいとして、人生までショパンに似たものがあるように感じます。
他の演奏者に比べ、彼のショパンがかなりダイナミックに聞こえるのは私だけでしょうか?
それでも、フー・ツゥオンは好きな演奏者の一人です。
ご無沙汰しております
素晴らしいコンサートでよかったですね
フー・ツォンのお顔もにこやかで・・・コンサートの成功が伝わってきます
まだまだお忙しいようですが、どうか御身お大事に・・・
アーティスト
はじめまして。群馬県在住の平凡な一会社員です。
フー・ツォンのコンサート、本当に素晴らしかったです。失礼とは存じながら、私も感想を書きたくてお邪魔してしまいました。

 私とフー・ツォンの出会いは今から30年近く前の、東京で大学生活を送っていた時でした。
当時クラシックギターのサークルに所属していた私は、「ギターのショパン」と呼ばれるF・タレガ(アルハンブラの想い出の作曲者)の作品に心酔していて、その世界を理解しようとショパンにも興味を持ちました。
ポリーニの前奏曲集や練習曲集のレコードを聴いていましたが、夜想曲集も聴いてみたいと思ったときに手にしたのがフー・ツォンのレコードでした。
彼のレコードを選んだのは、今にして思えば実に消極的な理由によるものでした。第一に価格が安い(笑)。
他のピアニストのものが5,000円前後したのに対しフー・ツォン盤はたしか3,600円でした。
次に、松永禎朗氏のイラストによるジャケットが個性的で目を引いたこと、そして帯にレコードアカデミー賞受賞の文字があったことでした。
「中国人の演奏かぁ。」と思いながらも、賞を取ったくらいなんだからいい演奏には違いないと思ったのです。
 一聴してその世界に引き込まれました。そして、解説に書かれた来歴やエピソードを読むにつけ、その人物像に非常に興味を抱くと共にぜひ実演を聞いてみたいという強い気持ちが起こりました。
そして、その願いは予想外に早く訪れました。
82年にフー・ツォンが二度目の来日を果たしたのです。一度目がおそらくまだ彼が若い頃(60年代?)だったようなので、多くの人が初めて彼の演奏を聴く機会だったのではないかと思います。

その演奏会は本当に素晴らしいものでした。
11月5日の東京文化化会館小ホール、今でもハッキリと覚えています。飄々とした風情で現れたフー・ツォンは想像していた感じとはちょっと違っていました。
でも、ピアノが鳴り始めてすぐに、私は魔法にかけられたようになってしまいました。ピアノから放たれた音がまるで香気のように立ち上り、ホールの天井から美しい音の結晶となって降り注いでくるかのようでした。
そのときの自分の確信は今でも変わっていません。
「これは一生に一度出会えるかどうかの音楽的体験だ!」ということを。
その感動を再び体験したくて、大学卒業後に85年・87年・89年と来日した彼の東京での演奏会に出かけました。残念ながらあの82年の演奏会のような「奇跡」は起こりませんでしたが、ショパン以外の彼のレパートリーの魅力も知ることができ、何よりも彼が目の前で演奏しているという幸せを感じることができました。
その後も彼の演奏を聴きたいという願いは常に持っていましたが、結婚して日々の生活に追われる中でやがて忘れ去られて行ってしまいました。
アルゲリッチ音楽祭に時々来ているらしいことは知っていたのですが、さすがに別府まで聴きに行く時間とお金も無いため、ここ数年はCDさえも聴かなくなっていました。
が、神様というのは本当にいるものなのですね!
ほんの一週間ほど前、今までしたことも無かったのに、なぜかインターネットでフー・ツォンのことを調べてみようという気持ちになり、検索したところなんと京都で演奏会があるというではありませんか!!
転妻よしこさんのブログによると91年にも演奏会があったようですが、ほぼ20年ぶりのフー・ツォンを聴けるチャンスが到来したのです。
が、たった一夜限り、しかも京都。新幹線だと帰りの電車が無く、宿泊する余裕もなし、クルマで行ってとんぼ帰りするしかありません。それにプログラムがすべてハイドン!ハイドンなんてほとんど聴いた事がなかったので(唯一86年にリヒテルが群馬に来たときの演奏会で聴いたのみ)少し迷ったのですが、もしかしたらフー・ツォンの実演を聴ける最後のチャンスかもしれないと思い往復1,000km、12時間かけて聴きに行きました。
20年ぶりに見るフー・ツォンは一回り小さくなって、ずいぶん華奢な感じに見えました。しかし、その演奏はいい意味で脂気が抜けたというか、より純度の高いものに昇化しているように感じました。
ハイドンの作品も非常に素晴らしく、こんなに素晴らしい音楽に今まで気づいていなかった自分を恥じました。
フー・ツォンの肉声も聞け、本当に来て良かったなぁと思いましたが、真の感動はアンコールの一曲にありました。
簡素なメロディーが流れ始めると、まるで会場がセピア色に染まっていくかのように感じられました。
作曲家・ピアニストの三宅榛名さんが、30年近く前にある雑誌の「私の好きな一枚のレコード」というコーナーでフー・ツォンの夜想曲全集を取り上げていて、その中で若い頃ニューヨークで聴いたフー・ツォンの印象を書かれています。
「・・・モーツァルトの一音、ただの一音を彼が弾き出すと、すべてその場が、ほの暗く、たそがれて行くように
思われ、そのときの彼の音色の鮮烈さは私のなかで後になってくり返しくりかえし思い出された。・・・」
そして私もあの時そのことを感じました。「ああ、これがそうなんだな。」と。
そして、あの最後の一曲を彼がどんな気持ちを込めて弾いていたのかは知る由もありませんが、私には「今、ここにいて生きている。それがすべて。それだけでいいのだよ。」と彼が教えてくれているように感じました。
思い出すだけで涙が出てきます。
本当に聴けて良かったです。素晴らしい演奏会でした。

追伸 今回のことで「望郷のマズルカ」のことを初めて知り、遅ればせながら読ませていただきました。
このような書物を出版した下さったことに深く感謝します。私が特に感銘を受けたのは、フー・ツォンが父君に対して出した手紙の中で欧米の音楽家と自分との比較を論じる場面です。先日の演奏会は、まさにその彼の演奏の本質が感じられるものでした。
彼のような人こそ真の「アーティスト」と呼ぶにふさわしいのではないかと思います。
ありがとうございました。長々と駄文を書いてしまい申し訳ありません。
Re: Re: 初めまして
>  今日は中華人民共和国の建国記念日「国慶節」です。ちょうど60年になります。昨晩、フー・ツォンと話していたときに、この60年の中国の現代史には複雑な想いがあるので、この日に中国にはいたくなかった。それで日本に来て、その足で台湾に行ってコンサートをやることにしたんだと言っていました。10月10日の台湾の国慶節も嫌なので、その前に上海に戻るそうです。60年前に新中国が誕生したとき、フー・ツォンは15歳。飛び級で進学した雲南大学で国民党政府に反対する政治運動に没頭し、新しい国づくりへの希望に燃えていました。その希望が踏みにじられ、両親の命が奪われたことは悲劇としか言いようがありません。国慶節の祝賀行事のお祭り騒ぎを見たくない気持ちはわかりますね。そんな彼の演奏に、何かダイナミックな力強さを感じる人は多いと思います。
Re: アーティスト
素晴らしいコメントをありがとうございました。
あの日の会場に、こんな方がいたなんてと本当に感激いたしました。

いただいたコメント、勝手にブログ記事の方にアップさせていただきました。
また、コンサートの主催者のロマン・ロラン研究所の方たちにもご紹介したところ、皆さん大変感銘を受けていらっしゃいました。

お礼に、と言うとおかしいのですが、私がフー・ツォンの取材を始めたばかりの頃の2003年12月の上海音楽院のマスタークラスのある日、1時間半ほど彼が演奏を披露してくれたときのビデオがあります。ハイドン、モーツァルト、ショパン、シューベルトを聴かせてくれました。彼の許可を得て録画したものです。このビデオをDVDにしてお送りしたいと思うのですが、非公開のコメントでご住所を教えていただければ幸いです。
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