フリーライターの森岡葉のブログです。 大好きな音楽のこと、日々の出会い、楽しかったこと、美味しかったもののことなどを書いていきたいと思います。



   
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jasminium

Author:jasminium
1956年生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。1975年~76年北京語言学院・北京大学歴史系に留学。音楽ジャーナリスト。2009年第53回ブゾーニ国際ピアノコンクールにプレス審査員として招かれたほか、ハエン国際ピアノコンクール、シドニー国際ピアノコンクール、中国国際ピアノコンクールなどにジャーナリストとして招かれている。著書:『望郷のマズルカ~激動の中国現代史を生きたピアニスト フー・ツォン』(ショパン)、『知っているようで知らないエレクトーンおもしろ雑学事典』(共著)(ヤマハミュージックメディア)、訳書:『ピアニストが語る! 現代の世界的ピアニストたちとの対話』(焦元溥著 アルファベータブックス)、『音符ではなく、音楽を! 現代の世界的ピアニストたちとの対話 第2巻』(焦元溥著 アルファベータブックス)

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ハノイ旅行記(1月15日~19日)ダン・タイ・ソン氏ベートーヴェン協奏曲全曲演奏会)

   
 昨年、浜松国際ピアノコンクールでお目にかかったときに、「私の友人の研究者が、ベトナムの植民地時代のクラシック音楽やオペラハウスの歴史についての資料がほしいと言っているのだけれど…」とダン・タイ・ソンさんに相談したところ、「1月にハノイでベートーヴェンのコンチェルト全曲の演奏会があるから、そのときに来ればいろいろな人を紹介してあげるよ」と言われ、日本人指揮者、本名徹次さんが音楽監督を務めるベトナム国立交響楽団とダン・タイ・ソンさんのベートーヴェンの協奏曲全曲の演奏にも興味があり、出かけることにしました。

 1月15日に第1番、第2番、第3番、1月18日に第4番、第5番を演奏するということなので、1月14日の夕方のフライトで出発することにしたのですが、その日は関東地方に大雪が降り、車で成田に向かったものの、東名高速道路はチェーン規制で大渋滞。慌てて引き返して電車に乗ったのですが、除雪作業でストップ。2時間経っても動かない あきらめて、翌日にフライトを変更。翌日も、成田に行くのは難儀したのですが、何とか1日遅れでハノイに到着することができました。

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 セント・ジョゼフ大教会の裏手の路地のバックパッカーが泊まるような小さなホテルをインターネットで予約して泊まりました。

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 1泊2500円にしては、広くて設備もまぁまぁ こんな丸いベッドに寝ました。

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 朝ご飯はブュッフェ形式ではなく、チキンやビーフや海老のフォー、ベトナム風バケットサンド、スクランブルエッグ&ベーコンなど、メニューを見て注文すると、持って来てくれます。これは、最初の日の朝に食べたチキン・フォー。マンゴジュース、コーヒー、フルーツなども付いています。

 さて、1日遅れの到着でダン・タイ・ソンさんにはご心配をかけましたが、ベトナム国立交響楽団の練習場に伺いました。

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 音楽監督・首席指揮者の本名徹次さんは、13年前からハノイで暮らし、ベトナム国立交響楽団を育ててきました。熱のこもった練習風景を見学させていただき、感激しました。

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 練習の合間のランチ・タイムに、ダン・タイ・ソンさんがベトナム料理のレストランに案内してくださいました。

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 ブュッフェ形式の素敵なレストランで、「これが美味しいよ」とソンさんに説明してもらいながらいろいろなお料理を選んで食べました

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 本名さん、コンサート・ミストレスのダオ・マイ・アィンさん、ソンさんの友人でヴァイオリニストのビンさん(ドライバーを務めてくださいました)との会食風景です。

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 蟹と卵のスープや、バナナの花のサラダ、揚げ春巻き、生春巻き、魚の唐揚げの入ったフォーなど、とっても美味しかったです。

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 ランチの後は、ハノイ音楽院ピアノ科主任教授のソンさんのお姉様ハさんを訪ねて、ベトナムのクラシック音楽やピアノ教育の歴史についてお話を聞くことができました。

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 今回のコンサートが開催されたハノイのオペラ・ハウスは、植民地時代にパリのオペラ座を模して建てられたすばらしいホールです。ディレクターの方に、オペラ・ハウスの歴史についてお話を伺い、資料もいただくことができました。

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 さて、コンサートですが、満席のベトナムの聴衆の方たちとソンさんのベートーヴェンのコンチェルトを堪能し、本当に来てよかった! と思いました。ちょっと無理をしても、動けば動いただけのご褒美はあるものだとあらためて実感し、今年も出来る限り動いて、考えて、書いて…、体力が続く限り頑張りたいなと思いました

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 ホールでのリハーサル風景。

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 ハノイ滞在中、私をサポートしてくださったヴァイオリニストのビンさんと。

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 本当に感動的なコンサートでした。

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 ベトナム戦争期の困難な状況の中でソンさんにピアノの手ほどきをしたお母様のリエンさんは、今年95歳。客席でしっかりとソンさんのベートーヴェンのコンチェルトを聴いていらっしゃいました。

 ソンさんと本名さんに、今回のコンサートについてインタビューしましたので、ここに掲載します。

ダン・タイ・ソン インタビュー in ハノイ (2013年1月)

◇ 2010年のショパン・イヤーが終わり、昨年はドビュッシー・イヤー、すばらしいコンサートや録音がありましたが、今、ベートーヴェンのコンチェルト全曲というプロジェクトに取り組んだ意図は、何だったのでしょうか。

(ダン・タイ・ソン) これは、私の長年の夢だったのです。モスクワ音楽院時代の恩師、ウラディミール・ナタンソンに、「君のベートーヴェンを聴きたいよ」といつも言われていたのですが、ほかのレパートリーを弾くことに忙しく過ごしてきてしまいました。50歳を過ぎ、様々な人生経験を経て、そろそろベートーヴェンを弾けるようになったかなと思っていたときに、新日本フィルハーモニー交響楽団からベートーヴェンのコンチェルト全曲を弾きませんかというオファーをいただき、遂にそのときが来たなと感じ、取り組む決心をしたのです。

◇ このプロジェクトを通じてベートーヴェンのコンチェルト全曲に向き合って、今、どのように感じていらっしゃいますか?

(ソン) ショパン・イヤーが終わった後の私にとって、次の最も大きなプロジェクトとなりました。ベートーヴェンのコンチェルトをそれぞれ弾くというのではなく、マラソンのように2晩で全曲弾くというのは、とても集中力を必要とする、興味深い挑戦です。5曲をまとめて弾いたわけですが、それぞれのコンチェルトは、まったく違ったキャラクターを持っています。第1番と第2番は古典的で、ハイドン、モーツァルトの雰囲気を持っていますが、第3番はとてもドラマティック。大好きです。ベートーヴェンらしさが現れています。第4番はロマンティック、第5番は言うまでもなく、英雄的でグラッツィオーゾ、優雅で美しい大曲です。海外では、このようなベートーヴェンのコンチェルトのマラソンは珍しくないですが、ベトナムでは初めてのことです。ですから、私にとって、ハノイでこのプロジェクトを演奏するということは、ほかの場所で弾くのとは違った感慨があります。すべてのオーケストラのメンバーと親しいので、ちょっとファミリー・コンサートというような雰囲気もありますね(笑)。5曲のコンチェルトをまとめて弾くというのは、私にとって初めての経験で、ブラジルで初めて弾いたときは、とても緊張しました。どのように聴こえるのか心配で…。その後は、少し自信が持てるようになって、体力的には大丈夫…、ランニングみたいなもので、100メートル走るのとマラソンは違うでしょ? 私は100メートル走の経験はあるけれど、マラソンの経験は無いので心配だったのです。ブラジルの後は少し楽になって、エネルギーを長く保つコツもわかり、東京でのコンサートに臨みました。すばらしい条件に恵まれたコンサートでした。音響のよいコンサートホール、整備されたピアノ、優れたオーケストラ、そして最高の指揮者、クラウディオ・クルス! 指揮者とピアニストの調和の妙を感じました。東京での頂点の後、ハノイに戻ってファミリー・コンサート(笑)! 私がとてもうれしく思うのは、このようなクラシック音楽のコンサートで、このホールが満席になることは初めてだということです。クラシックのコンサートのチケットは、ハノイの庶民にとってはとても高額なので、聴衆はいつもあまり多くありません。ベートーヴェンという偉大な作曲家のピアノ・コンチェルト全曲を聴くという、音楽的に深い意味のあるコンサートに多くの人たちが足を運んでくれるということを、心から喜んでいます。

◇ このプロジェクトを通じて、ベートーヴェンに対する考え方が変わりましたか?

 私はデビューしてから長い間、ショパン、そしてフランス音楽を主に弾いてきました。それらの作品は私に合っていて、自然に馴染んで演奏することができます。それに比べて、ベートーヴェンの作品を弾くのは、私にとってチャレンジという感じがありました。しかし、今回これまで弾いてきた音楽とはまったく違うベートーヴェンの世界に深く浸って、とても新鮮な気分を味わっています。私も人生経験を積んで、若い頃より成長したということでしょう。ベートーヴェンの音楽は、私に新たな境地を切り拓き、ショパン作品へのアプローチや表現も変わってきました。これは、私にとってとても重要なことです。何か大きなエネルギーを与えてくれたというか、以前には絶対に出来なかった表現ができるようになりました。そういう意味では、革命的な変化だと言っていいでしょう。何もかも、変わりました。ドラマティックなセンス、激情、とくに人間の感情の深さを表現するという面で、ベートーヴェンの音楽から学んだものは大きいと思います。ベートーヴェンの音楽に流れる感情のもっとも大きなものは何だと思いますか? 私は「微笑み」だと思うのです。人間という存在に対する「微笑み」・・・、それが聴く人の心をとらえるのです。ベートーヴェンの作品の緩徐楽章は、まるで彼があなたのすぐ傍にいて、あなたの気持ちに入り込み、あなたをすべて理解して包み込んでくれているように感じられるでしょう? そういう音楽は、人々を勇気づけてくれます。何故ベートーヴェンの音楽が、年末や新年の時期によく演奏されるのでしょう? それは、彼の音楽が人々の気持ちをつなぎ、前向きに進んでいく力を与えてくれるからだと思います。人間というのはとても複雑な存在ですが、もし私たちがお互いを思いやり、兄弟や姉妹のように愛し合って生きていければ、みんなが幸せになれる。音楽にはそういうポジティブな力があると、励まされているように思えます。大きな人間愛を感じます。

◇ このベートーヴェン・プロジェクトの後、あなたのレパートリーはどのような方向に発展していくのか楽しみです。

 恐らく、このままベートーヴェンをもっと弾いていくことになるでしょう。ソロのレパートリーを。ベートーヴェンの音楽は、私に何か新しいものを与えてくれると感じられるからです。私は、彼の音楽を弾くことを楽しんでいます。何か喜びを与えてくれます。

◇ お若い頃より、ベートーヴェンを身近に感じられるようになったということでしょうか?

 ベートーヴェンの音楽は、私に新しい地平線を発見させてくれたということです。視野が広がり、もっとレパートリーを広げてみようという気持ちになりました。これまでの私のレパートリーは、比較的狭かったと思います。このプロジェクトのおかげで、レパートリーをもっと広げてみようという意欲が湧いてきました。

◇ ベートーヴェンの作品は、モスクワ音楽院時代にナタンソン教授の下で学んだのですか?

 ベートーヴェンのコンチェルト第3番は、モスクワ音楽院に入学した最初の年に、ナタンソン教授が私に与えた作品です。その後、第2番と第4番をオーケストラと演奏したことがありますが、実は第1番と第5番は、私にとってまったく新しい作品だったんですよ(笑)。

◇ 本当ですか? 信じられません。

 第2番と第4番も、めったに弾いていません。第2番は、25年前にワルシャワで弾いて以来です。第3番は、モスクワ音楽院時代に学びましたが、オーケストラと演奏したことはありませんでした。つまり、学生として学んだだけで、ピアニストとして演奏会で弾いたことは無かったのです。そういうわけで、どの曲も、私にとってとても新しい作品だったのです。

◇ それは驚きですね。

 第4番が、一番よく演奏している作品です。でも、それも最後に演奏したのは、ずいぶん前…、あ、昨年、新潟のラ・フォルジュルネで仙台フィルハーモニー交響楽団と、震災復興への祈りを込めて弾きましたね。

◇ 先ほど、第3番が大好きだとおっしゃいましたが、5曲の中で第3番が一番お好きですか?

 うーん、難しいですね。どの曲も本当に素敵なので…。そのときの気分にもよりますね。第4番がいいなぁと思うときもあれば、第3番が好きだと思うときもある。でも、やはり第3番が一番私の心に響く作品かもしれません。

◇ ショパン弾きは、あまりベートーヴェンを弾きませんね。

 ショパンは、あらゆる作曲家の中でもっとも貴族的な人間だと思います。ですから、彼の作品を弾くときは、自分を生々しく主張することに、いつも限界を感じます。やり過ぎてはいけないと…。しかし、ベートーヴェンは違います。何も恐れず、ダイナミックに自分自身を表現できる。もっともっとドラマティックに、激しく弾いても大丈夫、そんなふうに私は感じます。ショパンは上品で貴族的…、その枠の中で彼の音楽を奏でなければならない。ベートーヴェンは、とてもシンプルな人間で、身なりにも構わず(笑)、自分がどのように見えるかも気にしない。そういう飾り気のなさ、実直さに惹かれます。もちろん、ショパンもベートーヴェンも天才ですが、私自身、とてもシンプルな人間なので、ベートーヴェンに親しみを感じますね。彼の音楽もとてもシンプルで、ただのコード(和音)のアルペジオで音楽を作ってしまったりする…、それなのに何故か人を感動させる。それこそが、彼の天才たる所以なのでしょう。たとえば、「皇帝」の最終楽章の冒頭、シ♭ミ♭ーミ♭ソーソシ♭ー、シ♭ミ♭ミ♭ソソー、これはまったくただのアルペジオじゃないですか(笑)。ショパンは、絶対にこういうメロディーは書きません。でも、すばらしい。このような単純なメロディーは、聴く人の心に安らぎを与え、優しく包み込んでくれます。彼の心は、とても広く大きかったのでしょう。

◇ あなたがベートーヴェンを新鮮に感じるのは、そういうところなのですね。

 そうです。今、私は彼の世界を楽しんでいます。

◇ あなたのベートーヴェンをもっと聴けるのを楽しみにしています。

はい。頑張ります!


本名徹次さん インタビュー

◇ 今回、ダン・タイ・ソンさんとベートーヴェンのコンチェルト全曲を演奏されて、いかがですか?

 一番うれしいのは、ダン・タイ・ソンさんがベトナム人であるということです。ベトナムを代表するピアニストが…、今回は3回目の協演なんですけれど、本当にすばらしいピアニストだということをあらためて感じています。彼が、本当にベートーヴェンのことを深く理解して、細部までものすごいこだわりを持って、それをオーケストラに要求して、オーケストラがそれを真剣に受け取って演奏しようとしたことが、今回の大きな収穫だと思って、すごくうれしいです。

◇ 私も聴きに来てよかったと、本当に思います。

 ありがとうございます。

◇ もう10年以上、こちらで活動していらっしゃるのですね。

 13年目になりますね、そろそろ。12年経ちました。今回はとくに…、まだまだかもしれませんけれど…、最初に演奏した曲がベートーヴェンのコンチェルトの第5番だったんですけれど、このオペラハウスで、そのときのことを思い出したら、すごいオーケストラになったなぁという感じがしますね。

◇ 日本のオケは、アマオケでもとても真面目で協調性があって、音程もよくてまとまりがありますが、中国のオケなどはとても奔放、同じアジアでも、それぞれ独特な感性がありますね。

 いろんな国の癖みたいなものはありますね。それが味で、ポジティブなところとネガティブなところがあると思うのですが、ベトナムの人たちのベトナムらしさというのは、決してネガティブな演奏にならないんです。それが、僕は凄いところだなと思います。とても自然な感じで、音程の取り方にしても、すごく優しい取り方、何て言うんですかね、高め高めに取らないんですよね。同音がちょっと低めだと思うことがよくあるんですけれど、それが…、それだけではないですけれど、そんな音程感覚がこう混ざって、ミックスされて、独特な色が出るんだなと最近よく思いますね。

◇ 何か優しく、温かいサウンドだと感じました。

 マーラーのゆっくりな楽章、武満さんの曲とか、ドビュッシーのゆっくりな曲とか、最初から不思議な色を出すので、びっくりしましたね。

◇ 私も、今日の「皇帝」の第2楽章を聴いていて、ジーンときました。

いい曲ですよね。
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