フリーライターの森岡葉のブログです。 大好きな音楽のこと、日々の出会い、楽しかったこと、美味しかったもののことなどを書いていきたいと思います。



   
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jasminium

Author:jasminium
1956年生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。1975年~76年北京語言学院・北京大学歴史系に留学。音楽ジャーナリスト。2009年第53回ブゾーニ国際ピアノコンクールにプレス審査員として招かれたほか、ハエン国際ピアノコンクール、シドニー国際ピアノコンクール、中国国際ピアノコンクールなどにジャーナリストとして招かれている。著書:『望郷のマズルカ~激動の中国現代史を生きたピアニスト フー・ツォン』(ショパン)、『知っているようで知らないエレクトーンおもしろ雑学事典』(共著)(ヤマハミュージックメディア)、訳書:『ピアニストが語る! 現代の世界的ピアニストたちとの対話』(焦元溥著 アルファベータブックス)、『音符ではなく、音楽を! 現代の世界的ピアニストたちとの対話 第2巻』(焦元溥著 アルファベータブックス)

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ショパン・イヤー! ~ ピアノ協奏曲の独奏版 ~

   
 年末・年始はちょっとのんびりして、毎日更新して食べ物のことやくだらないことをゴチャゴチャ書いていましたが、そろそろ仕事モードになりつつあります。これからは、毎日更新は無理そう。たまに覗いていただければと思います。

 今年はショパンとシューマンの生誕200年の記念イヤー。2人とも1810年に生まれているのですね。リストは1811年生まれ。ピアノ音楽史上きわめて重要なこの3人の天才がほぼ同じ時期に生まれているというのは、興味深いです。

 日本人はショパンが大好きなので、今年の日本のピアノ界はショパン一色になりそうな予感。10月にはワルシャワでショパン国際ピアノコンクールも開催されます。すでに昨年12月1日に応募は締め切られ、335人の申し込みがあったようです。 http://konkurs.chopin.pl/en/edition/xvi/id/1088 やはり日本人、多いですね。それから韓国、中国、ロシア。最近のコンクールはすべてそうですが…。
 この335人の中からDVD審査で160人が選ばれ、4月12日から21日にワルシャワで開催される予備審査でさらに80人に絞られ、10月の本審査に出場します。5年に1度の歴史と伝統のあるコンクールだけに、本審査に出場するだけでも大変なこと。ショパンのビッグ・イヤーに開催される今回のコンクールで、どんな新しいスターが生まれるのか、楽しみです。

 さて、ショパン&シューマン・イヤーということで、雑誌などに私が書く記事もそれに関連したものが多くなりそうですが、昨年末にインタビューさせていただいたピアニストの方たちのお話について、記事には書ききれなかった部分を少しずつご紹介したいと思います。

 まず、河合優子さん。ポーランド在住20年の日本を代表するショパンのスペシャリストです。ショパンの最高の権威で、半世紀にわたってナショナル・エディションを編纂しているヤン・エキエル氏のもとで学び、2005年からナショナル・エディションによる全曲演奏会を開催しています。その第9回目が、1月30日、浜離宮朝日ホールで開催されます。

河合優子さん

 シリーズ第9回目は、『洗練の極致、隠された涙』と題してワルツ全曲、子守歌ほかが演奏されます。私が書いたインタビュー記事は、月刊『ショパン』1月号に掲載されていますので、是非そちらも読んでいただきたいのですが、今日は、河合優子さんが世界初演したショパンの2曲のピアノ協奏曲の独奏版について書きたいと思います。

 ショパンの協奏曲の独奏版について書こうと思ったのは、私が大好きなピアニスト、シプリアン・カツァリスの熱狂的なファンのU-yanさんのサイト『ものごっついピアニスト、シプリアン・カツァリス』http://www.geocities.jp/txusui/ のトピックスに、今年のカツァリスの来日公演プログラムは、ショパンのピアノ協奏曲第2番の独奏版!! そんなのあったけ? と書いてあったので http://cyprien.blog32.fc2.com/ 、ピアノ音楽に関してはかなりマニアックなU-yanさんが知らないのであれば、私が知り得た知識をご紹介しておかなければと思ったわけです。

 ショパンの2曲のピアノ協奏曲、あのドラマティックで哀愁に満ちた美しいメロディーは誰でも聴いたことがあると思います。「ピアノの詩人」ショパンは、オーケストレーションが苦手で、オーケストラ作品は1曲も書かず、協奏作品も2曲のピアノ協奏曲のほかに『アンダンテ・スピアナート~』ほか4曲のみ。それも、17歳から20歳のごく若い時期に書かれた作品ばかり。それ以後は、ほとんどピアノの作品しか書いていません。例外は、初期のピアノ三重奏曲と晩年の大作のチェロ・ソナタかな。
 
 ホ短調の第1番は、実際には2番目に作曲したピアノ協奏曲で、出版の順序が逆になったため第1番になったそうです。ポーランドを離れ、パリに向かう告別演奏会でショパン自身が初演したとのこと。華やかな技巧が生かされた傑作ですよね。へ短調の第2番は、ショパンが初めて書いたピアノ協奏曲。オーケストレーションの貧弱さが指摘されますが、19歳のショパンのみずみずしい情感があふれていて、私は第1番より好きです。とくに第2楽章の切なさ、美しさには、何度聴いても涙が出るほど感動します(この協奏曲は、フー・ツォンの演奏が素晴らしい。私が書いた『望郷のマズルカ~激動する中国現代史を生きたピアニスト、フー・ツォン~』に付けたCDの中に、この第2楽章の演奏が入っています。これは、本を出版するにあたって何よりも嬉しいことでした)。ちなみに、この第2楽章は、ショパンの初恋の人コンスタンツィア・グラトコフスカへの熱い想いが綴られているとのことです。ショパンの若々しい情熱や葛藤が感じられて魅力的ですよね~
 
 そのピアノ協奏曲の独奏版、これは誰もあまり聴いたことがないと思います。私は、たまたま昨年5月にポーランドの名手ヤノシュ・オレイニチャクが横浜で開催したショパン作品の演奏会シリーズ(1週間に4回のリサイタルでショパン作品を網羅するシリーズでした)の最終日に披露されたのを聴きました。なんと2曲の協奏曲をソロで、第2番、第1番という順に聴かせてくれました。オレイニチャクというピアニストは、とてもナイーブな感性を持ったピアニストで、よい演奏とよくない演奏の差が激しく、よい演奏のときでも突然崩壊したりするのですが(そこが彼の魅力!)、この日は最終日で疲れていたのか、弾きなれない独奏版は準備不足だったのか、はっきり言ってあまりよい演奏とは言えませんでした(アンコールでポロネーズやノクターンを生き返ったように素敵に演奏したのが印象的でした)。私も聴きなれないせいか違和感があり、珍しい作品の演奏だ~と楽しみにしていただけに、ちょっとがっかり。これは、また聴きたいとは思わないな、なんて思ってしまったんです。演奏後に、オレイニチャクにインタビューしたら、本人も「2度と演奏したくないね。やっぱり、コンチェルトはオーケストラとやりたいよ」なんて言っていました。そのときに、「これって、誰が編曲したのですか?」と尋ねたら、「エキエルだよ」とのこと。それで、私は、これはエキエル氏がソロ用に編曲したのだと思っていたのです。ショパンはサロンで、コンチェルトを自分でアレンジしてソロで披露していたということなので、エキエル氏は資料を元にしてそれを再現する楽譜を作ったのだなと。

 ところが、この作品の世界初演をした河合優子さんにお話を伺ったら、まったく新しい事実がわかりました!! ショパンのピアノ協奏曲は、後から独奏版が編曲されたのではなく、もともとショパンがピアノ独奏の楽譜を書いていて、後からオーケストレーションしたものだったと言うのです。最初から1人用の楽譜があったというわけなんです!! 誰もそんなこと知りませんでしたよね? 19歳、20歳くらいのまだ若いショパンは、オーケストレーションに慣れていなくて、ここはフルートだな、ここはチェロだなというイメージを思い浮かべながら、まずピアノ・ソロで楽譜を書いたらしいのです。それから、もっと驚いたことは、最終的にオーケストレーションの詳細をショパン自身がやっていない!! 天才ショパンと言えども、まだ若く経験がないので、間に合わなくて誰か経験豊富な先輩音楽家に頼んだみたいなんです。フル・スコアに残っている筆跡が明らかに違うし、オケとピアノが短2度でぶつかったり、同じ人間が書いていたらありえないことが起きていると河合さんはおっしゃっていました。

 2000年頃にナショナル・エディションの楽譜が出たときに、河合さんはまずこのコンチェルトの独奏版の重要性に気づき、真っ先に取り組んだそうです(未だにポーランドのピアニストもほとんど弾いていないというのに)。本人がオーケストレーションをしていないのは、まず確かなこと。今、世界中で私たちが聴いているショパンのコンチェルトは、ショパン本人が意図していたものとはかなり違うかもしれない。もう一度原点に戻って、ショパンの耳に浮かんだオーケストラの音はどんなものだったのかを確かめるには、独奏版を弾いてみるしかないと。実際にやってみると、さまざまな発見があり、良いことばかりでしたと語ってくださいました。オケと弾くと何て楽なんだろうと思うことも含めて

 というわけで、U-yanさん、ショパンのピアノ協奏曲の独奏版、本当にショパン自身の楽譜があるんです。それを、カツァリスがどういうふうに料理するか、今からゾクゾクするほど楽しみですね~

 予習をするのでしたら、河合さんの録音があります。『Chopinissimo4(ショパニッシモ4)~「ナショナル・エディション」によるショパン集~』に、コンチェルトの第2番のソロ・ヴァージョンが収録されています。第1番は、『Chopinissimo7』に入っています。ご興味のある方は、是非どうぞ!! ナショナル・エディションの楽譜を見ながら聴くと、おもしろいと思います。 
| comments(2) | trackbacks(0) | page top |
情報、ありがとうございます
ありがとうございます。実に丁寧な解説で納得できました。カツァリスは以前、第2楽章のタウジッヒ編曲のことを話していたころがあったので、いまのいままで、きっとそのことだと思っていました。しかも、2番だけじゃなく1番もあるなんて。さすがのショパンイヤーですが、こんな曲は他の誰も弾かないでしょうね!
Re: 情報、ありがとうございます
U-YANさん♪

リンクの件、ありがとうございます !

私たちが頑張って「ショパン、弾いて~」とお願いした甲斐がありましたね^^
おもしろいショパンプログラムが聴けそう…。
バラードも弾いてくれるのかなぁ。

コンチェルトの1台ヴァージョン、本当に楽しみです。


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